まったく同じに見える学生証を持っている。
仔細に見てみたが、文字はすべて同じ、写真も同一、大学のスタンプの位置、カスレ具合もまったく同じなのだ。

それが意味するところを理解するのにしばらくかかった。
〈頭の中が真っ白〉というやつだ。

大変だな。
とおれは言った。

大変です。
親が理解してくれるのにとても時間がかかったの。
目の前にあたしが2人いるんだから、驚くよね。
でも、どっちも可愛い娘だ、と言ってくれました。

これから、もっと大変なの。
だって、社会的にもふたりいることを認めてもらわないといけないんですから。











同じ姿かたちで同じ学生証を持って、同じ名前を名乗るふたりをモデルにしておれは写真を撮っている。

おれは狂ったのではないか。
目の前にいるふたりは実在などしてなくて、狂った脳が作り出した幻ではないのか。
いや、もしかしたら世界が狂ってしまったのかもしれない。
だから、同じ女の子がふたりになったりしているのかもしれない。
おれは、透けたカーテンにくるまって戯れるふたりを見ながら〈狂っていること〉を考えていた。












動画から作っている