道は渋滞しててクルマはノロノロと進む。
「自動車事故があったみたいね」

わたしは、わたしを見てみる。窓の外を見ている。
ちょっと不安そうな表情をしている。
このわたしも同じような表情をしているんだと思う。
「だいじょうぶ」
隣に座るわたしは、うなづいた。
わたしはわたしの手を握った。
すると、わたしとわたしは、同時に心臓が強く鼓動を打った。
〈そんな顔してるのは良くない〉
〈だけど、そういう顔、見たことなかったけど、イイ〉
音になっていないコトバが伝わってきた。
手を握ると、感情が伝わってくるようなのだ。
わたしはわたしにときめきを覚えた。
握った手にぐっと力を込めた。

わたしとわたしはマネージャーといっしょに地下駐車場からエレベーターで5階に上がった。

途中階から乗ってくる人はいなかった。

社長室に入ると、芸能人あがりで未だに派手な中年男が、お、ほんとうだなと言った。
「ふたりになった。すごいな」




「惹きつけられる」「魅力を感じる」というのは、美醜の問題ではないような気がする。
この子だと、目と表情と動きに惹きつけられた。
この子が二人になったら、どんなことするのだろうと妄想し、画にしてみた。






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