偽双子は同居する。 1 | Clones are living together

あ、かわいいな。

そう思える女の子が、マクドナルドでセットメニューを食べている。
おれは、コーヒーを飲みながら（お代わり3杯めだ）、友だちと話している横顔を見ている。
ハンバーガーを咀嚼し、飲み込む動作をうっとり眺めながら、頭の中で彼女は、もうひとりの彼女と会話している場面に書き換わっている。
右側の彼女が、ハンバーガーを手にとって、もうひとりの彼女の口に持っていく。

はーい、アーンして。

もうひとりの彼女は、ハンバーガーを大きく口を開けて齧る。
口の端に、少しばかりソースがついた。
ペーパータオルを取ろうとするが、ハンバーガーを食べさせた子がちょっと待ってねと言って、顔をくっつくけるようにして、舌でソースを掬い取った。
彼女はちょっとびっくりした表情を浮かべた次の瞬間、もうひとりの彼女の唇に唇を重ねた。
ほんの一瞬だ。
おれは、勃起している。

 

（脳内の）ふたりの彼女は、キスがきっかけで、なんだかとろんとした表情になった。
うなずきあって、食事を手早く済ませて店を出ていく。

おれは慌てて、（脳内の）ふたりの彼女を追いかける。
現実の彼女と彼女の友人も、店を出ていったが、それはもうどうでもいい。

ふたりの彼女はアパートに着いた。
片方は服を脱ぎだした。

途中途中でスタンドに置いたスマートフォンのセルフタイマーで写真を何枚も撮る

ふたりとも裸になった。

そこでおれのとなりのでぶがぶつかってきて、おれはバランスを崩して椅子から落ちそうになる。
おれの頭の中から、彼女ともうひとりの彼女が消えた。