ときどき、人は旅に出る。
ときどき、旅先では奇妙な出来事が起こったりする。
SAORIにそれが起こってしまった。
彼女はふたり存在することとなった。
ひとりの方から分離したもう一つの肉体/意識が出現した、あるいはこの世界と同じような世界からその世界の彼女が迷い込んだのかもしれない。

いいよね。
いいって、何が。
ほら、あたしって、昔から鏡を見ながら鏡の中の自分とお話するのが好きでしょ?
ああ、そうね。なんか、変な趣味かもね。でも誰も見てないし。
でさ。
あー、いまあたしは2人いるものね。

会話できるもんね。
できるね。
うん、でも照れるね。
照れる。

不思議。
自分が自分に見られているって、恥ずかしいようなくすぐったいような。

自分とおしゃべりするのが好きだったけど、ふたりになったらなんかうまく話せないのです。





なんだか、自分は自分に慣れてない。
だけど、服を着ない姿で二人していることには恥ずかしさを感じない。

なぜなんだろうかと思う。