柏木由紀には秘密があります。

それは、〈ふたり存在する〉ということなんです。
まったく同じ柏木由紀がふたりいるのです。

あるとき、柏木由紀は総合プロデューサーに指名されて、秘密の地下パーティーに同席しました。
その時、「先生」によって柏木由紀が召喚され(もしくは創造されて)、柏木由紀と邂逅を果たしました。

ふたりは今、アパートで一緒に暮らしています。
「先生」の指示によって、ごく普通にふたりで生活を送るようになったのです。

パーティー会場から出た二人の柏木由紀は黒いSUVの後部座席に一緒に座りました。車が発進するとひとりは右手もう一人は左手をまったく同じタイミングで差し出して、手を握り合いました。
マネジャーも後部座席に座りました。
マネージャは不思議なことだよね、と言いました。
不思議なことではないよ。
と柏木由紀は言いました。
わかっていたことだもん。
柏木由紀が言いました。

そうなの?と言ったきり、マネージャーは黙ってしまいました。

車中ではふたりとも目を閉じている時間が多かったですが、ときどき、目を開けてもう片方をちらちらと見たりしていました。

アパートに入って
ふたりきりになりました。

ふたりは服も脱がず、抱き合いました。
しばらくの間そうしていました。

ひさしぶり。

ふたりは、以前からたがいを知っているようでした。














かたち