「ページをめくって行って違和感を感じるアイドル写真集」ってあると思う。
たとえば、こんなのはどうだろうか?

あとで、ちょっとした説明をしようと思う。

今回はアイドル写真集に感じる違和感について書きたい。

「アイドル写真集」は紙の書籍も電子書籍も、そして、同人誌もたくさん存在している。
グラビアアイドル、アイドル、歌手、声優、コスプレイヤーそのほか、写真集を出している人の属性も多様化している。
とうぜん、恐ろしい数の写真集が世に出ている

写真集の立ち読みなどというものはほぼできないので、宣伝のために写真集から数点紹介されている雑誌のカラーページだとか、ウェブの紹介記事、Amazonに載っていることもあるサンプルなどを見ていると強烈な違和感を覚えることがある。

写っているアイドルがなんか、人間ぽくないというか。
過剰なくらいの〈イジり〉が入って、もとの人物から結果的にかけ離れてしまうような、そういった写真に思えるのだ。

写真修整、いわゆるフォトレタッチは撮った写真をより魅力的に見せたり、撮影の意図をはっきりさせるためには欠かせない。
現在、PCとフォトレタッチソフトがあれば、誰でも写真の修整加工が手軽にできる。
むかし、ごとレタッチや高度な合成は印刷会社にある専用の機材で行うもので、その費用は高額だったという。
写真をハサミやカッターで切り抜いてきれいに貼り合わせるという、原始的な手法もあったが、こちらは職人芸みたいなものだ。
いまは、PCベースでできて、コストは劇的に下落した。

ということでアイドル写真では同人誌出版に至るまでレタッチはほぼ常識になってしまったようだ。
じぶんの発表する、あるいは頒布する写真を「重加工」と表明する人も多数だ。

で、写っているアイドルがなんか、人間ぽくないという問題である。こういうのを見てどう思うか。
わたしは、違和感を感じて、なんかキモチワルイと思う。

こういったのがたまに目に入って、うわ、ひでえと思ってしまう。
「人間らしさ」のようなものが除去されている。

なんか、人間を素材にした3DCGというか、生命を喪失した死体を被写体にしたというか、そんなふうに見えてしまう。
このグループ関連の写真はそういう類が多い。

以下に何点か写真を貼る。
大手印刷会社のフォトレタッチ担当者が流出させたという。「加工前・加工後」の写真であるという。
これ、信じていいのかどうかはわからない。
「加工前」のほうが捏造である可能性があるかもしれない。







さて、最初に紹介した3枚の続き。

創った夏目理緒の偽双子画像を見直してみると、見る人には「違和感」を感じるような偽双子画像が多数あるのではないかと思って、並べてみた。

これはわかりやすいと思う。
同じ写真を使ってふたりに仕立てたものだ。
単純に並べるのもおもしろくないので、手を加えてある。

もともとのサイズが小さい素材を拡大したものを使った。
けど、補正が効きすぎてちょっと細部がおかしくなってしまっている。
別なサイズ拡大方法を基にして創ったものも見てみてください。
拡大の比率はだいぶセーブした。

夏目理緒については、基本的にやらないと決めている「ミラーリング」をかなりやってる。
画像を切り抜いて左右反転させて貼り合わせる写真加工をけっこうな点数、創っているのだ。
これも、単純なミラーリングは加工というプロセスを楽しもうとする場合には、まったく面白くないので色々いじっている。
色々いじるというのがすごく楽しいのだ。

たぶん胸の大きさに幻惑されているのだと思う。

アイドル写真集では、ごくたまにミラーリングの写真があったりする。

ミラーというと、鏡を使った写真はけっこうな回数、見る。
鏡の中の自分と背中合わせのようなポーズをとる、鏡の中自分と見つめ合う、指を合わせる、キスをしてみる・・・
けっこう好きだったりする。

こういう感じのです。

これはミラーリング画像を創っているうちに、ミラーリングぽさをなくしたくなって試行錯誤しているという連作です。
あまり面白くはないですね。すみません。

ラスト。
これはずいぶん前に創ったもの。
気に入っている。

アイドルという虚構にはフォトレタッチがよく似合う

「アイドル」というのは幻想を売る商売だ。
だから、年齢だったり出身地だったり、その出自だったり、プロフィールが虚偽だったりしてもさして問題にならないし、問題にする必要はないと思う。
また、メディアを通じてアウトプットされる姿が、〈真実〉と違っていたっていいと思う。
ライブや握手会のようなイベントに行けないファンは雑誌やテレビや動画配信などで、きれいに変更された虚像を楽しむ。
極端な話、実在しない存在のアイドルだってかまわないと思っている人は多い。
初音ミクはじめ、ヴァーチャルアイドルやアニメに登場するアイドルに熱狂できるひとがたくさんいる。

ヴァーチャルアイドルがフォトリアルなCGで登場するのもそう遠くないのではないかと思う。

わたしはフォトレタッチでもって、アイドルを虚構化する作業をしているとも言える。
アイドルが、実は同じ姿かたちでもうひとりいるという虚構だ。








ミスマガジン2003 夏目理緒 [ 夏目理緒 ]