「あなた、誰」
「渡辺美優紀といいます」
と言ったら、その子は私の名前を名乗った。
「あなたは。誰なの」
「渡辺美優紀といいます」
「あなたはわたし」
「わたしはあなた」

「え、と言うことは、わたしとわたしがいるってこと」
「そっくりな同姓同名でなければ、そういうことだよね」

ちょっとおたがいを見てみた。
なんか恥ずかしい。
ので、背を向けた。
もし、この子がジブンだとしたら、わたしはジブンの後ろ姿を見ているということになるけれども、自分で自分の背中を見るだなんて考えて守ればすごいことだよね。

思い切って触ってみたら、わたしは
「ひっ」
と驚いてへたり込んだ。
「あ、ごめんね~」
って、わたしもしゃがんで、思い切って私に触ってみた。
ドキドキしたけど、からだをくっつけてみた。

「なんだか」
「なんだか」
「安心するね」
「安心するね」
と同時に言っていた。

で、わたしはわたしと仲良くなった。
人の姿を見ない学校のなかをふたりで歩いてみることにした。

ほっぺたを触ってみたりする。

「唇奪っちゃおうかなー」
「やってみる?」

やっぱ、はずかしー

「自分の変顔って見るの初めて、写真で見るのとやっぱ違うね」
「そう?」
「うん、かわいいと思うの」
「自分にかわいいって言われた」
「どう思う」
「うん、かわいいんだと思う」
「私って、かわいい」
「ほんとにキスしちゃおうかな」
「そうする?」

舌が怪しく動くのを見るわたし。

写真集のメイキング動画から創ってみた。