わたし・渡辺美優紀は放課後の学校で渡辺美優紀と会った。
校舎の入り口で、隣にわたしが立っているのに気づいた。何もいなかった場所に、突然現れたように感じる。
もう一方の私も同じようにいつの間にかもうひとり自分がいたという。
分裂して二人になったんだろうか。だとしたら、着ている服も分裂したんだろうか。
なんかの理由でわたしコピーされたとか。
だとしたら、誰が?異星人?未来人?なんのために?
宇宙人が私に化けたとか。
妖精のような存在とか。

理由はともかく、いまわたしは二人いる。
しかも仲良くなってなんか恋人同士みたいになっちゃった。

「シャンプーの匂いがします。とってもいい」
「それはおたがいさまでしょう」

わたしたちは交代交代でたがいの髪の匂いを嗅いでみた。
なんか変な感じだ。
髪の匂いフェチで、自分の匂いを嗅いでいるだなんて変態だと思うけど自分相手だものね。
ほかのひとからは双子姉妹が仲良くしてるみたいにしか見えないんじゃないかな、と思えば変態ではないのだ。

耳の後ろあたりから声が聞こえたり、息を吹きかけられたりすると弱いのを知っているので、もう片方の自分の耳を攻めようというところです。

「やめてよー」
「好きなくせに。気持ちいいでしょ」
「あなたにもやってやるよ」
「あ」

「あ、字が全く同じ」
「同じ人間ってことなんだろうね」

「脱いでもおんなじ」
「胸の大きさとか違ったりして」
「測ってみる?」

やっぱ、はずかしー

家に帰ってきた。
(すんなり家に帰れたわけでもないけれど、色々あった出来事については省略するとして・・・)

「どうしようか」
「してみる?」
「する?」

長い夜の始まり。

いたって平凡な人だけどふたりにすると悪くはない。なんて思った。