小島みなみ。
小島みなみ×小島みなみ。

言葉をなくす、という言葉はこういうときに使うのかと思った。

小島みなみの前には小島みなみがいた。
一瞬、めまいを感じて目を閉じる。
収まると、目の前に誰かがいる。

誰かと思ったが、すぐわかった。
自分だ。

思ったのは〈夢を見ているのではないか〉ということだった。

開け放った窓の外、遠く救急車のサイレンが聞こえてくる。
夢ではないようだ。

とすると狂ったのだろうか。
狂った?
狂った人は狂ったということがわかるんだろうか。
自分が狂ったのかもと疑う者は狂ってないはずだ。

「いま、じぶんは狂ったと思ったでしょ」
目の前の自分が言う。
「思ったよ」
と答えた。

同じことを同時に考えているようだ。

「現実かどうか、確かめてみようか」

みなみはみなみにからだを寄せてきた。



「おたがいの鼓動で確かめてみるのはどう?」
 


 
自分がとつぜん二人になるというシチュエーション、悪夢なのだが、甘美なものになるかもしれない。
甘美な悪夢の偽双子画像を創れたらいいのにな、と思うばかり。