偽双子|自分が自分であるためにもうひとりの自分と旅をしたんです。 3
わたしはいまわたしと旅している。
自分がふたりになるなるという、非日常的なシチュエーションに置かれてしまったので、わたしとわたしは非日常的なシチュエーションに逃避することにした。
自分がふたり存在するということが非日常であれば、旅も非日常である。
いま、露天風呂がついたちょっと高めの部屋にいて、わたしとわたしは裸でおたがいを見るともなしに見ている。
わたしたちは〈分岐〉した。
分かれたのだ。
〈分裂〉という語感は嫌なので。あくまでも〈分岐〉といいたい。
いま、とても静かな温泉旅館にいる。
午後、部屋の中で何をしているのかというと、わたしの裸を見ている。
なぜ裸を見ているのかというと、部屋にある露天風呂に入ろうとしているからだ。
同時に服を脱ぐ。
服を脱ぐもう一方のわたしに目を奪われる。
もう一方のわたしもわたしを凝視している。
たがいに「見ている」ことに気づいて、目を逸らしてしまう。
これまでの人生において、わたしはわたしの裸をじっくり見た経験はない。
なので、初めての経験をしている。
唐突に思いついた。
もう一方のわたしも、思いついたようだ。
ほくろの位置だとか、傷の跡だとか、同じなのかどうか確かめてみよう。
もし他人なら、
もし双子であったとしても、
ほくろや傷跡が一致するということはありえないことだ。
背中をスマートフォンで撮って比べてみる。
そう言えば、わたしももう一方のわたしもスマートフォンを持っていて同じ機種だ。
電話番号も入ってるアプリも写真も。そのほかまったく同じ。
試しに一方のスマートフォンで写真を撮るともう一方のほうにその写真がちゃんと入ってるのだ。
ふたりの背中の写真を表示して見比べてみる。
まったく同じ位置にほくろも、虫に刺されたらしいあとも見つけた。
同一の存在がこうして2つの肉体を持っている?
少し恐怖を覚えたが、わたしは同時に客観的に目にするわたしをとても愛おしいと感じた。
わたしとわたしはたがいの肉体に触れたくてたまらなくなった。
わたしはわたしにいいかな、と訊いた。
いいよ、とわたしは答えた。
柏木由紀の偽双子ものも温泉出てくる。
創りなおしして、新しいのも創ったので、いずれのうちに公開する。


































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