彼女(ら)は同一人物 16
今回のカメラマンは、若くて面白いセンスをしていると評判なのよ。
マネージャーが教えてくれた。それと、ちょっと変わったところがあって、自分の想像の世界に浸っちゃうんだって。ココロがどこか行っちゃっているとかで。
ああそうか、とあたしは思うのだ。
あたしとあたしを見ながら、口の中でなにかもぐもぐと独り言のようなつぶやきをしたり、シャッターを切ったあとでニヤニヤと笑っていたりして〈ヘンな人〉なのだ。
ひひ、うすす、うげげ、みたいな奇声もあげる。
もしかしてだけど、あたしって人を狂わせる魔性の女?
うーん、それは違うと思う。
あたしとあたしが一緒にいるじゃん、それ見ておかしくなっちゃうんじゃないの。だって、同じ人間がふたりいるってそうそうないことでしょ。
同じ人間か。
あたしとあたしは改めて見つめ合って異常さを噛みしめる。
そうだ、思いついたぞ、合成して4人にしちゃうってどうだい。
と、カメラマンが言った。
微妙に表情も変える〈クローンアイドル〉。
コメントを残す