「おふたりでご宿泊に変更でございますね、ツインルームでご予約ですから、まったく問題ございません」
フロントの男は無表情で抑揚も付けないで言った。
宿泊カードに記入し、もうひとりの名前は双子姉妹にありがちなひと文字だけ違う名前をでっちあげて書いた。
カードを差し出してデポジットを払った。
キーとミールクーポンを受け取った。

行くよ。
と、あたしは、あたしと同じスーツケースを持ってる子に言った。

「お客さま方」
「はい」
「職業柄、何組も双子のお客様をお迎えしましたが、お客さまおふたりほど、見分けの付かないお客様はおりませんでした」
「ええ、よく言われます」
とあたしにそっくりの子が言った。
「ね、おねえちゃん」
「そうね」
「どうぞ、ごゆっくり」

鏡張りのエレベーターで上がる。
無数のわたしが映る。

けっこう広いツインルームだった。
同じスーツケースを2つ置いて、ソファに座った。
距離を取った。

わけわからないよ、もう。
と彼女が言った。
どうなってるんだろう。
ともうひとりの彼女も言った。









空港のバゲージクレームでスーツケースを受け取った。
出口を出て空港のロビーに出ると。前をわたしと同じ服と靴の、同じスーツケースを引きずる女がいた。
追いついて、ちょっと、と声をかけた。
振り向いたら、その顔はわたしと同じだったのだ。

名前を聞くとわたしと同じ。

予約したホテルの名前を聞かれた。
同じホテルだった。

話し合って、一緒にホテルで泊まることにした。
双子の姉妹ということにして交渉しましょう、と。

自分と自分の旅行という奇妙なことになった。

だけど、とても楽しかった。
島のなかには人のいない場所がたくさんあって、わたしたちは開放的になった。
わたしたちはおたがいの裸を褒めあった。
写真もいっぱい撮った。

家に戻ったら、わたしたちは姉妹として生きる方策を親と考えることにしよう。

冬になると南のリゾート・アイランドに恋い焦がれるのだ。



これもアーカイブのつもりが、全部創りなおしてしまったもの。