そうね、たとえばSEXのあとで満ち足りて笑顔のふたり。
カメラマンのこのコトバがトリガーになってふたりは、からだに触れて、どことなくいやらしい(と思えるような)しぐさをしてみた。

変なことだ。
ふたつの肉体に分かれたあたしは、あたしとSEXのようなことをしているふりをしているのだ。

もうひとつの肉体が目の前にあって、背中に指をゆっくり這わせる。
そのとき、曖昧な記憶がはっきりと輪郭を現した。

以前、同じようなことを経験している。
あたしはあたしの背中を見て、指でなぞったことがあった。

小学校の時にあたしがふたりいた。

それから何回か、あたしはふたりいたことがあったのだ。
そのことは、なぜか記憶から欠落していた。

ベッドで何も言わないでふたりして抱きあって過ごしたことが何回かある。
一緒にお風呂に入って、背中を流しっこしたこともある。

そうだ。
中学2年のときにひどい失恋をしてしまったことがある。
家で晩ごはんも食べないでベッドに潜り込んでいた。涙を流していた。
いつの間にかふたりになっていて、泣き顔、あんまり良くないと思うよ、そうかな、なんて話をしたのはぼんやり覚えている。

〈自分がふたりいる〉ことが記憶から抜け落ちるのはどうしてなんだろうか。
同じ人間がふたり存在するという非現実的なことを、脳が受容せずに消去してしまうのだろうか。
あるいは、何者かがあたしの記憶を操作して消去したのだろうか。
わからない。
あるいは、夢で見たものだったのかもしれない。







夢もしくは妄想の生み出す眺め。






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