わたしは、「わたしとわたし」になった。
「わたし」が2つの肉体で存在しているのだ。
わたしは、わたしと、マネージャーが運転するクルマに乗って事務所に向かった。

「ねえ」
「驚かないの」
ふたつの言葉は重なって出てきた。
「おもしろい。ステレオ音声ね」とマネージャーがみじかく笑った。「もちろん、驚きました。でもね、驚いてばかりじゃいられないでしょ。同じ人間がふたり存在するんですよ、と言ったって世間が認めるわけないわけで。頭がおかしいって言われておしまい」
そりゃ、そうかも。
と、わたしはわたしと顔を見合わせた。
「でも、第三者としては、よく似た双子の姉妹に見える、ということだから、じっさいは驚くには当たらないと思う」
「そうか」
「見え方としては、双子でしかないもんね」
「でも双子じゃないもんね」
「あら、そうなの」とマネージャーは言った。「違いはないの?」
「そうね、ないと思うよ。双子じゃなくて、わたしとわたし」
「指紋とかほくろとか同じで」

「なので、まず、現実というものに合った対応をしないとね。その手続をこれからするの」

クルマは、事務所が入っているビルの地下駐車場に入った。

事務所には社長がいて、わたしとわたしを見て、おお、と小さくつぶやいた。




グラビアアイドルが自分同士で共演しているというシチュエーションはいくつ創っても飽きないですね。






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