外を出歩いても、他の人々は小池里奈が小池里奈と一緒にいるということに関心を持っているわけではない。
考えても見てほしい。
〈同じ人間〉がいて、同じ人間ふたりが一緒に歩いているなどということを誰が信じるのだろう。
そのような不可思議なことなど物語だとか狂人の妄想の中にしか存在しないことだ。
だから、小池里奈が小池里奈と一緒にいるなどとは思いやしない。

そういう当たり前の事実に、ふたりはちょっと安心して大胆になる。
公園なんかで通行人にスマホで写真を撮ってもらったりする。

旅先のホテルでは、気づけばからだをくっつけあっている。
で、見つめ合ってほほえみ合ったりして、かわいいよ、かわいいね、などと言い合う。

〈自分が好き〉なことを外部化して、ふたつの肉体で確認してる。
なんて思ったりする。
 




同性愛者・小池里奈ふたりのおはなし。