強力な妄想力を持つ人ならば、補助となる写真とか映像とかがなくったって、自分の生み出す妄想に耽溺できるだろう。

だけど、ぼくは凡庸な、いや、凡人よりも劣るような想像力しか持っていない。
なので、妄想を補助する写真を用意しようと思い立った。
当初は、雑誌や広告やなんかにごくたまに見つかるような「一人二役写真」を収集した。
だけどそういうものは、本当に少ない。

だとすれば、自分で制作してみるか。
そうして、パソコンを使って偽双子画像を創るようになった。






創った画像でとりとめもなくシチュエーションを頭の中で創る。


私は、わたしの背中に手を這わせてみた。
手のひらを通じて私の緊張が、わたしにも伝わってきます。


キスのマネごとをしそうになる。
わたしとわたしは、頬を合わせるのが好きです。


どうしよう?
ねえ、どうしようか。
もう少しわたしはわたしの匂いを感じていたいんです。


あ、これがわたしなんだな、とわたしはわたしを見て思った。
自分を外から見るのって、なんか不思議な違和感がある。
わたしって、こんなのだったっけ。


自分を見て違和感を覚える。
ぴったりくっついて片時も離れたくないわたしとわたし。
交錯する思い。