「自分」に目を合わせるのがむずかしいのだ。

スマートフォンで写真の撮りっこして少し緊張がほぐれ、たがいの(自分の)顔を見ながら、話ができるようになった。

ねえ、緊張してる?
と翔子は翔子に質問する。
そうだね。緊張というより警戒してるというか。
あたしがあたしと一緒にいるなんてね。こんな不思議なことってある?って思うよ。
それともあたし、おかしくなっちゃったんじゃないかなんて思う。
それを聞いたもう片方の翔子もうなずいた。
これがいま夢を見てるんじゃないかとか。
あたしは頭が狂っちゃって、自分が二人に分かれたっていう妄想をしてるんじゃないか、なんて思ったりもする。
狂ってるのかもね。

狂ってる。
狂ってるのかもね。







狂ってるかどうか。
確かめる?

翔子は翔子に向き合って見つめ合う。
たがいに一歩踏み出して同時に右手を前に出して向き合う翔子の腕に触れる。

手に鼓動が伝わってくる。

からだを引き寄せて抱き合う。

翔子は翔子にからだを押し付け合う。
動悸がシンクロする。
肌が火照って湿ってるのがわかる。

どうしよう。